風太が想いを寄せている、スピッツのユキミさんです。ユキミさんと初めて会ったとき、一目惚れした風太。美しいユキミさんのお顔をじっと見つめ、感動のあまりその場から動けなくなったほどでした。その光景を見ていた人間は『犬も一目惚れするんだ』と衝撃を受けたのでした。
出会ったばかりの頃は、恥ずかしくてユキミさんの近くにすら寄れなかった風太ですが、最近はだいぶ接近できるようになりました。美しいユキミさんのお顔をジッと見つめる風太。そして、見つめられてまんざらでもなさそうなユキミさん。
じつは、ユキミさん。この美貌で犬のみならず、人間のオスも虜にしています。もちろん、師匠・レイチェルはユキミさんにライバル心を抱いているのですが…。
「レイチェル、相手が悪いよ。ユキミさんだもん。勝負にならないよ」
と、師匠、人間のメスにたしなめられています。弟子もそう思います。
「師匠。人間の恋愛にもですね、土俵っていうものがあるんですよ。アラフォーのワタクシがですね、20代の女子と張り合ってもしょうがないわけですよ。アラフォーはアラフォーの土俵で勝負しないと。ユキミさんも、ほら、犬なんで良く分かりませんが熟女ですからね。師匠は、なんだかんだ言っても人間でいうならば20代じゃないですか。もっと、若年層をターゲットにしたらどうでしょう?」
「何よっ!だって、若いオス犬だって、ユキミさんにはうっとりするじゃない?」
「それは、20代の人間のオスが、『オレ、黒木瞳なら付き合える』とか言うのと一緒ですよ」
「意味が分からないけど?」
「私もよく分からないです…。なんというか、ユキミさんは黒木瞳のようなものだと思えば…」
「ふーん。まあ、いいわ。でも、犬って飼い主に似るっていうけど、風太さんも恋愛、不器用よね。ユキミさんを見つめているだけじゃないの!」
「不器用なりに一生懸命なんですよ。ユキミさんに会えただけで、風太は幸せなんです」
「まあ、分からなくもないけど…。でも、アピール力が弱いっていうか、好いてるって気持ちが伝わりにくいじゃない。ユキミさんは分かってるようだからいいけど、そうじゃない相手だったら、だた、ジッと見つめてくる不気味なパグ犬扱いされるわよ」
「風太は、見つめているだけで自分の気持ちに気付いてくれるユキミさん、ということも含めて、好いているんだと思うんですよ」
「価値観の一致、っていうことね。確かに、恋愛において価値観が似ているかどうか?は大切だとは思うけれど…。じっと見つめているだけなのもねえ…」
風太の恋は、師匠から見ると「じれったい」のだそうです。まあ、少しずつではありますが、進展はしているので、師匠、長い目でみてください!
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