師匠からムッとされたまま、越年しておりましたが、先日、ようやく尻尾を振ってもらえました。「お許しが出た」というよりも、しばらく師匠の目の前でルシファーと仲良くしていないから、師匠のお怒りが収まってきた、のだと思われます。
「師匠から嫉妬の重要性を学びましたが、やはり、人間の女子としては師匠の教えを忠実に実行するのは難しいです」
「人間だから、っていうより、アンタが不器用なだけなんじゃないの? まあ、今更、どうにもならないだろうから、無理することないわよ」
「そうですよね! 不器用なり一生懸命ですから、私!」
「一生懸命ねぇ…。鬱陶しいオンナだと思われないように、気をつけなさいよ。一生懸命と鬱陶しいは表裏一体なんだから」
「師匠…。チワワなのに、難しい言葉を知っていますね。表裏一体なんて」
「天才チワワなのよ、私は。どんな風に一生懸命なわけ?」
「そうですね…。夜空を見上げて、『月がきれいだな』って思って涙ぐんじゃう、みたいな?」
「そう…。それならいいけど。『私、一生懸命なのよ!』って相手に押し付けるようになったら、おしまいだからね。気をつけるのよ! 私みたいに、たまには、気のないそぶりをするぐらいのテクニックがアンタにもあればねぇ…」
「気のないそぶりですか。あ、確かに! 私、本当に気がないときは、徹底的に冷たくしちゃうんですけど、冷たくされているのに電話をかけてくる男子がいますねえ。って、無意識のうちにテクニックになっていたわけですか!?」
「不器用にもほどがあるわね…。何をやっているのよ! 今年はもっと、ちゃんと学習しなさいよっ!」
「はい。今年もよろしくお願いいたします」