仕事の参考資料にと、『中原淳一きもの読本』を貸していただきました。中原淳一さんは昭和20年代に『それいゆ』『ひまわり』などの雑誌を創刊し、戦後の女性に夢と希望を与えてくれた方です。雑誌編集長であり、イラストレーターであり、人形作家であり、デザイナーであり、とものすごく多才な方でもあります。
この本のイラストが、また、可愛いのです。そして、とっても実用的。衿の抜き方によって、こんなに印象が変わりますよ、という説明要素もフォローしながら、ヴィジュアルとしての機能も果たすのです。文章もソフトでマイルドなんだけど、けっこう辛口で、「着物を着る女性が少なくなった」ことを嘆いているのでした。
そのお嘆きは、まるで平成の今を生きている人のようなのですが、驚くのはこの本が昭和30、40年代に執筆された原稿を再収録している、という点です。その頃から、日本人の着物離れを憂いていたのですね。中原淳一さんは。
時代を超えて、私が中原さんのお嘆きに共感していることもビックリです。ということは。着物離れにまつわる事情は、この40年ほどの間、まったく変わっていない、ということなのでしょう。それは、この40年の間、日本人の着物離れは、ギリギリのところで踏みとどまってきた、ということでもあります。
中原さんは1983年に70歳でお亡くなりになっています。2009年の今、ギリギリ踏みとどまってきた着物と着物を愛する女性たちのことをご存知になったら、どんな風に思われるかしら? なんて想像しながら読書をしておりました。