こんばんは。栗原貴子です。
先日の「1文字1円とか1記事500円というライティングって?」という記事を
多くの方に読んでいただいております。
ありがとうございます。
そこで今日は私の「格安ライティング業界」の体験ルポを書きますね。
「ライター」業界に新しくコンテンツマーケティングというジャンルができた、
ということを知り、「どんな感じなのか?」と思って、
ある会社に登録したことがあります。
まず、その会社の募集サイトには、
「ライターさん同士の交流の場を作ります」
「万全のバックアップ体制です」
みたいな、ことが書いてありました。
登録すると、「このような案件がありますが、どうですか?」というメールが届き、
応募すると選考のための課題提出
(実績のある人はこれまでの経歴でOK)がありました。
私は課題は免除で経歴のみで採用となりましたが、
「ライター」を希望したのに
「ご経験から、薬事校正をお願いしたい」とのご連絡がありました。
「いいですよ~」と返信したところ、
お仕事の内容、作業のスケジュールの詳細がメールで送られてきました。
ここまでの流れ、すべてメールで完了しています。
で、私はさすがに「アレ?」って思いました。
これ、クライアント企業があるお仕事だよね?
なのに、詳細、メールだけって、アリなの?
スパイ映画などでよくある、
顔や声を知られちゃいけない、
殺し屋さんとかへのお仕事依頼じゃないんだからさっ。
交流、メールのみ。
ま、引き受けた以上、きっちり働きますよ、と
チェックする原稿が届くのを待っておりましたら……。
まさかの、「スケジュール変更」のお知らせメールが。
私の任務、薬事校正とは、
薬事法に抵触しない内容になっているか? を最終チェックする立場です。
薬事法とは、刑事罰の対象になっている法律なのですが、
健康や美容に関して、読者や視聴者に過剰な期待を抱かせるような
表現をしてはいけませんよ、というようなものです。
チェックの前段階の作業で何かあったのだろうな? と
のんきに思っておりました。
そして、原稿が届いてビックリ仰天!!
まず、今日明日でなんとかお願いします!というムチャな納期。
おまけに、原稿が
「こんなものを世に出したら、一発で薬事法アウト!」
「薬事法のこと以前に、日本語もヘン!」
という、とんでもない代物だったのです。
私は直ちに担当者にメールしました。
「これでは掲載できませんし、企画の段階からNGなものもあります。
校正のレベルを超えていますが、リライトしましょうか?」と。
すると、担当者はヒーとテンパり、
「リライトしてください」とメールしてきたのです。
この期に及んでメールか?
こういう場合、「詳しく聞かせてください」って電話してくるよな、と
心の中で毒づきつつも、
「作業を先行いたします。
報酬については終了後にご相談させてください」とメールしました。
で、
「どうして原稿をエクセルで書くのだろう?」という謎を抱えつつ、
大急ぎで作業をしましたよ。あたしは。
そして、終わった後に
「薬事のことは大変デリケートですし、クライアントに打撃を与えかねないことです。
もし、詳しい方がいらっしゃらないようでしたら、
私でよろしかったらご説明しましょうか?
今回の報酬のこともご相談したいですし」
とメールしたのですね。
そのときは「私も不勉強で申し訳ありませんでした。
あらためてご連絡いたします」
というお返事いただいたのですが……。
その後、なしのつぶてでした。
報酬はその会社のサイトにアクセスし、
私の管理画面から請求書を発行するというシステムでした。
リライトしたことは、なかったことになっていました。
まあ、もう自分から応募しなければ、
この仕事をすることはないから、いいか、と思っておりました。
そうしたら、その数か月後に、
その会社の別の人からメールがきて、
「○○(前回の担当者)から栗原さんが薬事のことに
詳しいと聞いて、お仕事をお願いしたく……」
はい?
はい?
はい?
速攻でお断りのメールをお送りしたのでした。
未経験者もOK とのことでしたから、
今、お仕事をされている方の多くは気づいていないのかもしれません。
担当者ですら、内容をしっかり把握していないということや、
薬事法が最悪の場合、懲役刑すらありえるような法律だということも知らずに
働いているのだ、ということを。
それじゃあ、ライターとして頑張りたい、っていう人の
スキルアップにならない。
こうしたお仕事を発注しいる運営側は
クライアント企業に「全国の登録ライターに一斉に発注し、
お手頃価格で大量の原稿を仕上げますっ」とセールストークしているらしい。
あかんって、それ。
そもそも、原稿料は半世紀近く据え置きなのだから。
お手頃価格とか、言わないで~~~~。
「万全のバックアップ体制」どころか、
バックダウンだから。
私がこの経験をしたときのギャラは正確には覚えていないのですが、
ライティングが1記事3000円くらいで、
薬事校正は1記事700円だったと思います。
1文字1円、1記事500円ではないけれど、
ライターの方は企画だしから、リサーチ、
フリー素材からの写真のセレクトに原稿執筆(1200文字くらい)なので
すべてをこなすと、
時給1000円にならない業務内容でした。
その後、この会社さんの報酬、少し上がったみたいですけど、
それでも数千円単位です。
大量生産、大量消費、お手頃価格で! というのは
あらゆる業界で今、起こっているけれど。
機械で作ることができないものにまで、
こうした流れが浸食してくる現実は、
経済的に発展している社会とは
言えないと思います。
ちょっと立ち止まって、
消費者や末端の人たちから
意識を変えていくことで、
社会の流れを、経済の状況を変えていく力にする。
それが大事なのだと、つくづく思う今日この頃なのでした。