道行く着物姿のご婦人を眺めているとき。
「この人は趣味やおめかし系ね」
「こちらはお師匠さん系ね」
と、勝手に心の中でカテゴライズしております。
何を持って、そんなカテゴリーを勝手に作っているかと言いますと……。
歩き方の違いです。
大股でかかとから着地している人は趣味、おめかし系。
いわゆる、スリ足で歩幅も小さく歩いているのがお師匠さん系。
さて。どちらが、美しい歩き方かというと、言うまでもありませんが「小さい歩幅でスリ足」です。
わたくしはお茶も踊りも習得しておりませんので、偉そうなことは言えませんが……。そういうお稽古事をされている方は着物のときの歩き方も素敵です。
お稽古ごとに無縁だった私にこの歩き方を教えてくださったのは、バラエティ番組に出演されていた市川春猿さんでした。
歌舞伎の美しい女形として名高い、春猿さんですが、この番組の中で「どうすれば、あんなに美しい女になれるのか?」という質問を受けていたのです。
たまたま、洗濯物を畳みながら「ながら」でボケっとつけていたテレビでしたが、
「そ、それは、あたしも是非知りたいです!」
と、洗濯ものを放り出して、正座をして視聴しました。
春猿さんは、
「膝と膝の間に紙を挟んで、落とさないように歩くんですよ」
と、ご説明されながら実演。
早速、プリンターからコピー用紙を取り、わたしも実践。以降、しばらくの間、ひそかに自主トレを続けました。
着物を着ることにばかり、気がいっていたわたくしは、それまで「歩き方」のことなど考えたこともありませんでした。しかし、歩き方がダメだったら、着物姿も決まらないじゃない?と 遅まきながらやっと気付いたのです!
春猿さん!!ありがとうございます!
そして、歩き方のみならず、所作や動作の一つ一つが、着物姿を美しくするのだ、ということも理解し始めました。
「あたしって、着付けがうまいじゃん」
と、天狗になっていたわたくしでしたが、大切なのは着付けの技術じゃないんだと、あらためて気付かされたのでした。
どうすれば、美しい所作ができるのか。
どういう動きが美しいのか。
毎日、意識するようになりました。「女の子は女らしく」的な教育が施されなくなった今、女性はともすると、大きな動きをしてしまいがちです。パンツスタイルのときは歩幅は大きく歩いた方がさっそうとして見えるしね。
けれど、着物のときは、それがことごとく美しさを損なう原因になるんですね。
で、私は街で着物姿のご婦人をみかけると、じっと観察をし、動作が美しい人を”盗視”するようになりました。
見て盗め、状態。
そして、美しい着物姿の人の動きが「小さい」という共通項を発見したのです。
腕もニュッとフルで伸ばさない。肘を少し曲げ気味がMAX。
そして、動きはややゆっくり目。
忙しい現代社会においては、『も、もどかしい!』と思うこともしばしばですが、それをぐっとこらえて着物タイムで動くことが大切なのですね!