着物道に足を踏み入れ、早20年。
「着物が好きだし、自分で着物が着られたらいいなあ」
というシンプルな思いが動機でした。
けれど、すぐさま、その奥の深さに驚愕しました。
季節によって模様や素材が変わるというのは、まあ、想像できることではありましたが。
その模様にも、いろいろな種類があって、意味があって。素材にも染め、織りという、大きく二つに分類される中でも、さらに、「○○染め」「○○織」と種類がたくさんあること。TPOにふさわしい、ドレスコードが存在することなどなど……。
一時期は、こうしたことを、すべて暗記しなくては! と意気込み、受験勉強さながらのお勉強もしましたが、あるとき、ふっと気付いたんです。
「勉強になってしまったら、着物が楽しくないじゃないか」と。
楽しみながら、ゆっくりと一つずつ、覚えていけばいいんだと思えるようになってからのほうが、知識も広がっていったように思います。
まだまだ、精進していかなくては、と思いつつも、20年の探求で見えてきたのは、
「何事も、ひとつずつ、段取りを踏んでいくことが大切である」
ということでした。
昨日も書きましたが、着付けは下着を着ている段階が、家でいうなら基礎工事のような存在です。下着からきちんと紐一本一本にまで、手を抜かずに着つけなければ、美しい着付けはできない。
着ている途中で、つじつまを合わせることも、ある程度のごまかしはきくけれど、ほぼ、不可能に近い。
それって、別に着物に限らず、いろんなことに言える「真理」だし、仕事にも通じることなんですが。
わたくしはその「真理」を着物道から学んだのでした。
仕事でも、おおむね、立ち上がりの段階から手順を踏んでいったものは、順調に進んでいきます。
けれど、基本のルールがあいまいなままだったり、関係者の主張に一貫性がなかったりすると、グズグズとリズムが崩れていくものです。
着付けで使う腰ひもの本数は、人によって異なります。私は長じゅばんを着るときから腰ひもを使いますが、このファースト腰ひもを「ピシッと」締めることが、出来上がりを左右します(だから、腰ひもをペンタゴンにしておくことが大切になるのです)
「これって、まさに、何事にも言えることよね~」
と、ファースト腰ひもをしめるたびに、思うのでした。
ピシッと腰ひもを締めるためには、あらかじめ、ペンタゴンに畳んでおくという準備が必要というのもまた、いろいろなことに通じます。
あらかじめを、きちんとしてあれば、後の作業が楽になるのもまた、仕事と同じなんですよね。