じつは、1月下旬というのはこのエリアのお天気があまり、芳しくないシーズンでして、あいにくの空模様でしたが…。それでも、気温は20度前後あって、ものすごく寒い東京からやってきた身としては、その気温だけで極楽。
旅の同行者は8歳年下の編集者A子ちゃん。
初日の宿は小浜島です。『ちゅらさん』のロケ地になったことで、有名になり人気が出た島です。石垣島からフェリーに乗ること25分。小浜島には、某旅行社主催のツアーでいらした、オールドマンとオールドウーマンがわんさかいました…。『同じホテルじゃないといいよね』とテレパシーを送りあう、A子と私。が、祈りむなしく、同じホテルでシャトルバスを下車するオールドマン&ウーマンたち。「お父さん、ちょっとちょっと」、「あ? 何?」…。私もあと倍生きたら、彼らのようになるのでしょう。それを承知で言ってもいいですか? どうして、日本人の高齢者ってリゾート地が似合わないのでしょうか?
ホテルのリゾートの演出むなしく、宿泊客が醸すオーラによって温泉宿の風情に様変わり。大声で私語を交わしまくるツアー客を先に客室に押し込みたい、フロント係と添乗員。ゆえに、後回しにされる、私たちのチェックイン。
「おかけになってお待ち下さい」
待ちぼうけの私の目の前に、例のツアーのオールドマンがふたり、着席します。お母ちゃんがチェックインしている間、お父ちゃんは座って待つ。女子に対するサービス精神ゼロ世代の男たち。そんな態度で離婚されなかった、あなたたち世代は、幸せですよ…、と心の中で語りかけるバツイチの私。私の前夫はチェックインはしてくれたけど、離婚しましたからね…。などと物思いにふけっていると、
「いや~、ヒザが痛くて」
ヒザをさすりながら、語り始めるオールドマン一号。すると、オールドマン二号、
「私は去年、手術をして。リハビリ中です」
小浜島で?ちゅらさんの島で? なんで、こんな会話を小耳に挟まなくちゃいけないの~!?オールドマンたちのチェックインが終わるまで、ひとしきりヒザの痛みとリハビリについて小耳に挟みましたとも。コラーゲンを摂取しようと心に誓いました。
さて。ようやく、私たちのチェックインの番が回ってきました。「では、お部屋にご案内します」と言われた瞬間、あれ? A子の荷物がありません。
「もしかして、先ほどの団体の方が間違って?」
もしかしなくても、そうでしょう。それしかありません。っていうか、A子よ。20代女子が70代に荷物を間違えられるって、アンタ、どんだけ地味な荷物なのよ!?
「お探ししてお部屋にお届けしますので」
ということで、部屋に案内される途中、A子の荷物を手に、ウロウロしているオールドマンを発見! 無事、荷物を取り戻してチェックインしたのがこのお部屋です。
なかなか、ナイスです。部屋からはオーシャンがビューできます。
どういうわけけか、このホテルの敷地内にはくじゃくがいました。このように部屋の窓の下にやってきて、「なにか食べさせろ」とアピールします。ですが、「餌付けやめてね」とホテルからのお達しが。しかも、人に慣れているせいか、ご自慢の羽根を見せてもくれません。
私「ルックスはいいけれど、ケチな男って感じだね。このくじゃくは」
A子「あ~。微妙ですね」
部屋でくつろぎながら、「今晩の食事はどうするか?」を真剣に議論。地元の居酒屋に出かけることに決定しました。
まだ、時間も早いので散歩がてら歩いてゆくことに。
私「あ~。島に来たって感じだね。ウキウキするねえ」
A子「自然と笑いがこみ上げてきますね」
歩くこと10分。今だ、ホテルの敷地内のようです。
私「…意外と、広いみたいだね。小浜島って」
A子「ですね」
さらに歩くこと10分。どんどん、辺りが暗くなってきました。
私「よく考えたら、街灯がないんだね」
A子「帰りは真っ暗闇ですね」
私「この傘(→ホテル備え付けの雨傘)を杖代わりに帰るのかなあ」
さらに歩くこと5分。目的地に着く気配なし。さすがに、おかしいと気付き、通りすがりの車を止める私とA子。車は止まってくれたものの、「満員だよ」といきなりの乗車拒否。なんで?乗せてなんて頼んでないじゃんと思いつつ、道を尋ねると…。
運転手「あと、2キロぐらいあるよ。歩いてゆくのは無理じゃない?」
2キロ…。この地図を見る限り、全部で1キロもないような感じ…。そう、地図、縮尺、おかしいですよね?
運転手「電話して、迎えに来てもらいなよ」
ここで小浜島では「居酒屋 送迎システム」が常識であることを初めて知った次第。
私「ガイドブックに書いてあった?」
A子「書いてなかった」
私「ホテルのフロント、教えるべきだよね? こういう情報は」
A子「あいつめ。絶対、わざと黙っていたんですよ」
私「そうだよね。出かけるのだって見ていたんだから」
自分たちのうかつさを棚に挙げ、ホテルマンを逆恨みしつつ、居酒屋にお迎えを依頼。こうして、迎えに来てもらってたどり着いたのが、居酒屋「さとうきび」です。
超美味しかったお刺身です。遭難しかけていた状況から救われた、という特殊な心理状態だったせいでしょうか? 再び、かなりのハイテンションに。さんざん、飲んで喋って、居酒屋の人に送ってもらってホテルに無事、帰還しました。
2日目。
小浜島からフェリーで石垣島経由で竹富島へ。
何年ぶりになるのでしょうか? 竹富島は二度目の訪問だったのですが…。竹富島は、すっかり観光地になっていました。
フェリー乗り場からレンタル自転車、水牛車の乗り場まで送迎の車が出ているのですが…。歩いても10分~15分ぐらいの距離なのです。
A子「次に送迎車が出るのは、20分後らしいですよ」
私「じゃ、歩こうか」
20分、ぼんやりと待っている間に歩けば着いてしまうわけですから、ここは普通、歩きますよね? しかし、竹富の人の反応は違った…。
「え? 歩くんですか? 遠いですよ?」
徒歩15分=遠い
かつて、仕事でグアムに行ったときのことを思い出しました。「明日はすごく遠くに行く」と現地コーディネーター(グアムの人)がしきりに言うので、「どのぐらい遠いのか?」と質問すると、
「車で30分」
それって、すごく遠いですか? ちょっと遠いぐらいじゃないですか?
南の、それも島の人たちの「遠い」の感覚は、東京とは違うのですね。いかに、東京の人間があくせくしているのかが分かります。私たちは、送迎車が出発するまで、船着場で20分、ぼんやりできません。ぼんやりしているぐらいなら、歩きたい。そうでないと、なんだか「無駄な時間を過ごしている」ような気分になってしまうからです。
『帰りたくないなあ』
星砂の砂浜で海を眺めていたら、雨が降ってきました。
雨が降ると、現地の人たちは「こんなお天気でスミマセン」と観光客に謝るのです。
お天気悪いの、誰のせいでもないのに。
「せっかく来てくれたのに、こんなお天気で申し訳ない」のだそうです。
都会でくたびれちゃった者にとって、島の雨は、それはそれで格別です。
いろいろ、思うところがある者にとって。
島の雨はやさしいです。
続きは3日(日)にアップします。